トモダチ
「会いたい!」
風を切って走ってきた、あの時の君の笑顔が忘れられないの。
渋滞を横目に渋谷を過ぎて、坂を登って行くふたりは子供のように叫んだ。
「お前、めっちゃ明るいじゃん!」
「そうなの!私、本当はめっちゃ明るいの!」
そうやって笑い声だけ取り残して、二人乗りの自転車が冬の冷たい風の間を割った。
また冬が来るよ
失った日々をまだ飲み込めずに頬の奥でためているっていうのに。
横断歩道を一人でどうやって渡ればいいの
私の隣にいない君を憎んでしまいそうで怖いの
君は何処にいるの、ゆっくり嫌いになってほしかったよ
今日も私はひとりきり、君に会えるかもって期待を寄せて歩く
結局スクランブルは素通り、独り善がりばかりだな