雨乞い
久しぶりに券売機に触れて、置いていかれてしまったと私は思った。
時間をかけて買った切符で仕事へ向かう途中、
雨が風に吹かれて地下鉄の窓の模様を斜めにしていく様を眺めている事にふと気がついて、
雨が好きだと実感する。雨がとても好き。私を一番可哀想に見せてくれるから。
冬を終え春の香りがする頃に私は街に出るのが怖くなって、
私とは違う華奢な身体に綺麗に染められた金髪の影を見つけるたび、
怖くなって足をすくませている。ああ、良かった。あの人では、なかった。
こんなにも会いたくないのに、こんなにも恐れているのに、最早憎しみまで覚えているというのに、探してしまう。
私から雨を奪っていくあの人を。